外国人の扶養控除制度の見直し
Q.不良外国人に 「扶養控除制度」が悪用されているので、就労ビザ配偶者ビザ等で日本に滞在する外国人の扶養控除制度が平成27年度に見直されるとの話を聞きました。実際、どのような改正なのでしょうか?
A.就労ビザ等で日本に滞在する外国人の扶養控除については、従前より問題が指摘されていました。
実際、会計検査院が、日本人の配偶者ビザ、永住ビザ、定住ビザを持つ外国人や海外に家族を残して日本で働く就労ビザや投資経営ビザをもつ外国人の扶養控除の状況について調べたところ、扶養する家族が多いため、控除額が高くなり、所得税がゼロの人が全体の7割近くに上っています。
これは、あまりにも異常な数字ではないでしょうか(ちなみに多くの就労ビザの条件としては「日本人と同等の給与水準であること」が要件となっていますので、不当に安い給与の場合はそもそも就労ビザは下りません)。
本来、扶養控除は、親族を扶養する場合に冬者の経済的負担を軽減する役割のものですが、以前から外国人が扶養控除制度を悪用して「税金を逃れるために悪用されている」といわれていました。
そこで、「現在の制度では緩すぎます。真面目に税金を払っている人が不信感を持ちかねない。控除対象をヨーロッパ並みに、直系尊属(=自身の父母、祖父母)と実子のみに限定するなど、早急に制度の見直しをすべきです」と自民党の片山さつき参院議員が指摘しました。
諸外国の例を見ても、日本のチェックの甘さは異常です。米国では、子供の扶養控除を認めるには半年以上の同居が必要で、直系尊属以外の傍系尊属(=自分より上の世代に属する伯叔・父母など)は課税年度を通じた同居が要件です。また英国では、実子は国外にいても控除対象ですが、養子は居住要件が課せられます。
片山氏によると、2012年の扶養控除額が300万円以上と高額で、扶養親族の居住地が確認できた1426人の内、扶養親族数は、国内が1264人、国外が1万2786人と、10倍以上にもなります。
さらに、納税者 1人が扶養する親族数は、国内だけの場合は、平均 5.9人ですが、国外を含むと平均 10.2人に跳ね上がり、その内 57.6%が、2親等や3親等の姻族まで含まれていました。
また、高額所得者ほど国外扶養親族の人数が多く、控除適用額と推計減税額が高額になっています。
所得金額が、695万円未満の納税者が申告した国外扶養親族数は平均で 8.9人で、推計減税額は約 20万円
所得金額が、1800万円以上の場合では、それぞれ 14.2人、約 222万円
結果、国外に扶養親族を抱える 68.8%が所得税がゼロとなり、その中には、所得が 900万円以上もあった人が17人も含まれています。
このような異常な数値があったにもかかわらず、就労ビザや配偶者ビザを有する外国人の扶養控除の多くはスルーされていたのです。
しかし、これでは問題だということで、とうとう国も動き出した、というわけです。
2.具体的な外国人の扶養控除制度の見直し内容とは
「日本国外に居住する親族に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等」が義務化されます。
まず、個人の所得税及び住民税については、親族を扶養すると所得控除というものが受けられ、税金が安くなるようになっています。
その親族が日本国内にいる場合、同居をしていなくても、国内の話なので、国税庁及び市区町村が調べようと思えば、本当に扶養しているかを調査することができました。
しかし、一方で、親族が国外に居住している場合、その親族を本当に扶養しているか、はたまた本当にその親族が存在しているのか、という点を捕捉することが費用対効果の問題で困難でした。
疑義のある場合に任意で現地の住民票のようなもの、送金している事実を示すもの、などを請求をすることもしていたのですが、現実にすべての事案については行っていないようでした。
これらは、在日外国人のコミュニティの中でうわさが回り、国外居住の親族を「便宜上」扶養したことにして税を逃れる方法が確立していたとも言われています。
そこで、平成25年に国の支出等の監査を行う会計監査院より「特定検査対象に関する検査状況」という形で正式な指摘を受け、改正する運びとなりました。
具体的には、平成27年度税制改正では、下記のように記載されました。
日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の適用を受ける納税者に対して、確定申告書等に「納税者の親族であることを確認できる書類」、「納税者が親族の生活費等に充てるための支払を行ったことを確認できる書類」を添付し、又はその確定申告書等を提出する際に提示することを義務付ける。
1.確定申告において、非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際提示しなければならないこととする。
ただし、下記2又は3により提出し、又は提示したこれらの書類については、添付又は提示を要しないこととする。
2.給与等又は公的年金等の源泉徴収において、非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除又は障害者控除(以下「扶養控除等」)の適用を受ける居住者は、親族関係書類を提出し、又は提示しなければならないこととする。
3.給与等の年末調整において、非居住者である親族に係る扶養控除等の適用を受ける居住者は送金関係書類を提出し、又は提示しなければならないこととし、非居住者である配偶者に係る配偶者特別控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を提出し、又は提示しなければならないこととする。
・「親族関係書類」と「送金関係書類」とは?
上記の改正は、平成28年分以後の所得税、平成29年度分以後の個人住民税について適用される予定です。
また、上記の「親族関係書類」とは、次の1又は2のいずれかの書類となります。
1. 戸籍の附票の写しその他国又は地方公共団体が発行した書類でその非居住者がその居住者の親族であることを証するもの及びその親族の旅券の写し
2. 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類で、その非居住者がその居住者の親族であることを証するもの(その親族の氏名、住所及び生年月日の記載があるものに限る)
上記の「送金関係書類」とは、その年における次の1又は2の書類で、その非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるためのその居住者からの支払が、必要の都度、行われたことを明らかにするものとされています。
1. 金融機関が行う為替取引によりその居住者からその親族へ向けた支払が行われたことを明らかにする書類
2. いわゆるクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその親族が商品等を購入したこと及びその商品等の購入代金に相当する額をその居住者から受領したことを明らかにする書類
そして、このような資料をきちんと確認する必要が今後出てくるわけですが、困ったことに扶養控除を受ける外国人が確定申告で提示等するのではなく、年末調整される方については、お給料を支払う源泉徴収義務者に提示等することが原則になるようです。となれば、雇用主側できちんとチェックする必要があり、仮に源泉所得税の計算を間違えたのであれば、その不利益は雇用主が負うことになります。
本来なら、国税がきちんとチェックすべきなのですが、国税の手間を削減するためにこのような仕組みとなると考えられるわけで、平成28年分以後は大きな負担が雇用主に課せられることになりますので注意が必要です。
なお、さらに負担が大きくなるのは、上記書類の取得や翻訳です。
これらの親族関係書類又は送金関係書類は、そのまま提出すればいいのではなく、日本語訳が必要とされています。
しかしながら、「外国政府や外国の地方高級団体が発行した外国の親族関係を証明する書類」がいったい何なのか、判断するのは困難ですし、外国人本人がきちんと日本語に翻訳できるか疑問な場合も多くあることでしょう。
そこで、当事務所では、そのような方のため、外国人の方が正当な扶養控除を受けられるよう、外国からの出生証明書、結婚証明書、親族関係証明書等の書類の請求、翻訳を行います。
外国からの出生証明書、結婚証明書、親族関係証明書等の書類の請求、翻訳でお困りの方は、是非お気軽にお問い合わせください。
(費用の目安)
①出生証明書、結婚証明書、親族関係証明書等の書類の請求:3万円~
②出生証明書、結婚証明書、親族関係証明書等の翻訳:5千円~
(※扶養親族を偽装していると疑われる場合、もしくは偽装が発覚した場合、業務報酬はお返しできません。あくまで正当な扶養親族の確認書類のサポートのみとなりますのでご理解のうえ、お申し込みください)
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